この7月にSITA2級試験に合格された田中 郁子さん(横浜市在住 72歳)が、横浜市鶴見郵便局主催の「夏休み親子創作手紙教室」で講師を担当されると知り、炎暑の8月7日、鶴見郵便局を訪ねた。
 当日は、郵便局の大きな会議室に、パソコンを使った創作ハガキコーナーのほか、貼り絵ハガキ、押し花ハガキコーナーも設けられ、多くのお母さんと子どもさんたちが楽しそうに作品つくりに取り組んでいた。

 「当郵便局では、田中先生を中心として14年前から『手紙の集い』を毎月1回開いています。今までは、野菜スタンプ、ちぎり絵、貼り絵など、様々なアイディアを盛り込んだハガキを作る教室でした。今回、はじめてパソコンを取り入れてみましたが、なかなか好評のようです。地域に密着した存在となるよう、郵便局では色々な催しを行っています。今日の『夏休み親子創作手紙教室』では、参加費として500円をいただき、お渡しした10枚のハガキで色々な作品を作り、夏休みの自由研究課題やおじいちゃん・おばあちゃん、お友だち、先生に出すハガキを作っていただいています。郵便局に近い鶴見小学校の3年生と4年生に呼びかけたほか、鶴見駅前でもチラシを配りました。郵便局は地域の“情・交・安”(情報・交流・安心)拠点になることを目指して、また『新たな意識と行動で、公社に向けた総仕上げ』をキャッチフレーズに、規制がなくなり競争が導入される公社化後も地域の皆さまに選んでいただける郵便局になるよう頑張っています」と郵便局の担当職員の方が熱っぽく語られた。

 
 
家族3世代で真剣にハガキの図柄えらび
 
 
お友だちに出すハガキがバッチリできました!
左端が田中郁子先生

 パソコンコーナーでは、田中 郁子先生を囲んで、ハガキを作りたい子供さん達が、自分の考えた文章を持って列を作り順番を待っていた。自分の番になると、まず初めに田中先生といっしょに図柄を選ぶ。次に前もって用意した文章を田中先生に入力してもらう。そしていよいよ自分のデザインしたハガキのプリントである。プリンターから自分だけのハガキが出てきたときには、驚きの表情と共にお母さんといっしょに歓声を上げた。
 平塚に住む、従兄弟のたかし君、ひとし君宛てのハガキを作った勇太くん。佐賀のおじいちゃん・おばあちゃん宛のハガキはタマミちゃん。お友だちのために楽しいハガキを作った里香子ちゃん。それぞれみなさん初挑戦のMyパソコンハガキつくりに楽しく取り組んでいた。

 教室終了後、さっきまで子供たちの歓声が上がっていた部屋で、14年も前から続いている鶴見郵便局との親密な関係を田中先生にうかがった。
「ふるい話になりますが、今から20年ほど前、朝日新聞の『ひととき』に文通の楽しさを投稿したところ、それが掲載され全国から驚くほどの反響がありました。それがきっかけで、45歳以上の方を対象としたシルバー文通の会『ひととき文の会』がスタートしました。いまもこの会は継続し、毎月発行する会報も9月で235回になります。これがそもそものきっかけなんです。そして、14年前、突然、郵便局長さんが我が家に訪ねてこられたんです」と、その当時を思い出しながら話し始めた。
「私はその時まで知らなかったんですが、郵便局内では『ひととき文の会』のことが有名だったらしいのです。それで、郵便局長さんが私に『鶴見郵便局内で手紙に関する会を開いていただけませんか』とおっしゃられて、そこから『手紙の集い』が始まりました。毎月1回、午前10時から午後2時くらいまでお弁当持参で集まり、20名の会員が交代で毎回講師になり、ハガキにまつわるスピーチをしたり、体操をしたり、歌ったり、にぎやかな集まりなんですよ。もちろん、本題であるハガキの作成には一番時間を費やします。この会が14年も続いた理由のひとつは、会員全員が持ち回りで講師になるところにあると思っています。スピーチをするために情報収集をしたり、勉強をしたりと、皆さん、苦しみながらもその苦しみを楽しんでいるようです」と言うことばから、田中さんの若々しい笑顔の秘訣がわかったような気がした。

 今回の教室で主役だったパソコンのことに話を向けると
「10年前からワープロを使い、6年前からパソコンを始めました。いまでは趣味の投稿もメールでしています。手紙で投稿していた頃は、何度も推敲してから清書して出していたのですが、メールだと簡単に投稿できてしまうので、その数も増えました。投稿は、ストレス解消、頭の体操として私の生活から欠くことはできません。

  また、SITA2級に合格したことが、手紙教室にパソコンコーナーを作る勇気をくれました。ほかにもIT講座のサブ・インストラクターも経験しましたし、やる気を起こさせてくださったSITA試験に感謝で一杯です。今は1級を目指して私なりに勉強しています。『一生元気、一生受験』をモットーにこれからも人生を闊歩していきます」と、目を輝かせながら話す姿から、日々の充実した生活がうかがえた。 
 「私の好きな言葉はね・・・・」と言いながら、私のメモ用紙に次の言葉を書いた。20年ほど前「主婦の友」に、ある会が開設され、その講師の松原泰道先生から教えていただいた言葉だという。

“訪れる人には微笑みを 去りゆく人には幸せを”
“女あり 二人ゆく 若きはうるわし 老いたるはなおうるわし”
(ホイットマン)

 1通の投稿がきっかけである会が始まった。それが20年もの間粛々と続いている。それどころか、同じ主旨の会がもう一つ生まれ、それも14年間続いている。これだけで田中先生のお人柄が分かる。
 「アウトプットするために一生懸命インプットするんです。だから毎日、本当に時間がないんですよ」と、くったくのない笑みを浮かべながら、生きる標と多忙な毎日をさらりと語ってくれた。このような心がけが、きっと田中先生を多芸にしたのだろう。ピアノの先生もしていたことがあると聞いて驚いた。また、書道も大好きだという。
 最後に田中先生が書かれた「笑」「夢」をみせてくれた。この二つの文字は共に田中先生の生き方そのものだと感じつつ帰路についた。とてもすがすがしいインタビューであった。